原作『ピーターパン』と恐怖のネバーランド|ディズニー映画の原作

ディズニー映画『ピーターパン』の原作ディズニー映画『ピーターパン』の原作を知っていますか?

「永遠に大人にならない少年」「妖精のティンカーベル」「ネバーランド」など夢いっぱいのモチーフはいかにもディズニー、私ちゃんたまも大好きなのですが。

原作にはちょっとこわい要素

今回は『ピーターパン』の原作について、わかりやすく解説します。

  1. ピーターパンの原作を紹介
  2. ディズニー版と原作のキャラクターの違い
    (ピーターパン、フック船長、ウェンディ、ティンカーベル、ナナとダーリング夫妻)
  3. ネバーランドに隠されたかなり恐ろしい事実
  4. 原作で迎えた結末とあらすじ―ウェンディとピーターのその後について

以上を書いていきます!
おなじみのディズニー映画をまた違った視点で楽しめますよ♪

『ピーターパン』の原作・作者

ピーターパンの舞台「ロンドン」

ピーターパンの原作はJ.M.バリの『ピーターパンとウェンディ』である

ピーターパンは、イギリスの物語。作者のジェイムズ・マシュー・バリはイギリスで有名な劇作家、小説家。作品は最初『ピーター・パン、大人になりたがらない少年』として、ロンドンの劇場で上映されていた。

大人気を博したあと、『ピーターパンとウェンディ』というタイトルで小説化された。これが私たちが知るピーターパンの原作である。

作者の私生活を襲った悲しい事件

作者のJ.M.バリは成功者だったものの、私生活では不幸が続いた。

バリが6歳のとき、兄のデイビットがスケート場で事故死。
大人になったバリは、1894年に女優のメアリー・アンセルと結婚するが、その翌年に母と姉を2日の間に相次いで亡くしてしまう。
その後、妻のメアリーが不倫を重ねている事実が明らかになり、1909年に離婚した。

一連の不幸な出来事は、彼の作品に少なからず影響を与えたとも言われている。

ディズニー版と原作キャラクターの違い

空を飛ぶピーターパンのイメージ

ピーターパンは悪ガキで、フック船長は貴族?

ディズニー版ではピーターパンがヒーローで、フック船長がヴィランだが、原作ではそうとは言えない。

ピーターパンは生意気で無知な子供

  • ディズニー版のピーター:無邪気でちょっと生意気な少年
  • 原作のピーター:↑基本的には同じだが、もっと辛辣である。「ピーターほど生意気な少年はほかにいなかった」「ピーターは自分のことにしか興味がない」「島の中でもピーターだけがものを書くことも読むこともできない」。

『ピーターパン』原作は、子供が単純に「純粋な天使」というわけではなく、無知で生意気で残酷という面も正直に書いている。

フック船長は良家出身の貴族

  • ディズニー版のフック:赤い高級な衣装を着ている。海賊を率いる船長でピーターに恨みを持つ海賊。ひょうきんでおっちょこちょいな面も。ディズニーヴィランズの中でもコメディ格のにくめないキャラクター。
  • 原作のフック:「死人のような形相」「浅黒く、長い巻毛で、遠くから見ると黒い蝋燭のよう」「目は深い悲しみをたたえている」ディズニー版よりは、やつれて、ちょっとこわい外見をしているようだ。言葉使いは優雅で、いつでも貴族のような雰囲気をまとっている。性格は、残酷で冷徹だが、一方で「礼節を重んじる」とも表現される。

ディズニーアニメーションはピノキオのように大幅に原作を変えることもあるが、『ピーターパン』では、ストーリーもキャラクターも原作の要素をかなり残しているのが特徴だ。

ピーターパンがフック船長の右手を切り落としたのも、フック船長がワニを恐れているのも原作通りである。

ただ、フック船長がしつこくピーターパンを追い回すのは、復讐のためではなく「ピーターの生意気さのせい」だとくりかえし強調される。

ウェンディとティンカーベルの恋心

ディズニーの『ピーターパン』では、ウェンディティンカーベルがピーターパンをめぐってちょっとした嫉妬心を燃やす。二人だけでなく、人魚たちやインディアンのタイガー・リリーも、ピーターパンの周りにいる女性たちはみんなピリピリ仲が悪い。

実はこの設定も原作通り。ディズニーの脚色ではない。
ティンカーベルもウェンディも本気でピーターパンの彼女になりたいと思っているが、子供のピーターパンには理解されず、イライラを募らせる描写がある。どの世界でも女の子の方が早く大人になるからだ。

モテモテのピーターパン

ピーターパンは生意気で自己中で、少し時間が経つだけで人の名前も忘れてしまうような少年だが、どういうわけか女性に超モテる。

女の子たちはみんなピーターにふり回され、イライラしながらも、ほっとけないらしい。母性本能をくすぐるってことか…。

子守り犬のナナとウェンディの両親

ウェンディが育つダーリング家には、厳格なお父さん、優しいお母さん、そして子守りのナナという犬がいる。ナナは犬なのに「子守り」である。これはいかにもディズニーらしいキャラクターだが、なんとこれも原作通り。お父さんがナナにやきもちを妬いて、ナナを追い出してしまうのも原作通りである。

これについてはまたあとで触れる。

ネバーランドとピーターパンの恐ろしい秘密

夢の島「ネバーランド」には、秘密が隠されていた。
実は、原作『ピーターパン』の中で一番恐ろしい箇所はココである…↓

謎の存在、ロストボーイズとは?

ディズニー版でも出てくるが、ネバーランドには「迷子たち(ロストボーイズ)」と呼ばれる少年たちがいる。ピーターの手下みたいな子供たちでみんな男の子だ。

迷子たち(ロストボーイズ)の存在は、ディズニー版ではくわしく語られない。ただの着ぐるみを着たわんぱくっ子たちだ。しかし「お母さんの存在を知らない」とは、ディズニーアニメでもちらっと語られていた。どういう意味か?

原作では、ロストボーイズたちは「乳母車から落ちてしまった子」だと説明されている。ピーターと同じく、子供のうちに何らかの理由で親元から離れてしまった子達ということだ。

成長した迷子たちを“間引く”ピーターパン

この子たちは数が「決まってない」らしい。なぜなら、体が大きくなると、ピーターが“間引く”から。

つまり、大きくなると、不定期に、ピーターパンに殺されてしまうのだ。

ピーターだけは永遠に大きくならない少年だが、迷子たちは成長してしまうようで、大人になると殺される運命にある。ピーターパンの命令は絶対で恐れられている。

迷子たちはすべて男の子である。
理由は「女の子はとても賢いから乳母車から落ちたりしない」からだ。

ディズニー版で描かれなかったあらすじ

ピーターパンの舞台「ロンドン」

意外にも原作に忠実なディズニーの『ピーターパン』だが(↑上記の恐怖要素以外)、多少の違いや書ききれなかった部分ももちろんある。

フック船長はプライドのために死ぬ

ディズニー版でも描かれたピーターとフックの海賊船上の戦い。
ディズニーでは、もちろんピーターが勝つ。追いやられたフック船長は「俺はタコだ」と叫ばされて、ズルをしたあと、敗北し、チクタクワニに追われる。フック船長は卑怯者として逃げるだけで、殺されるシーンは描かれていない。

しかし、原作ではむしろ逆と言えるかもしれない。

原作では、ズルをするのはピーターパンの方である。しかし、そう仕向けたのはフック船長本人という複雑さだ。フック船長は、最後にピーターパンに「剣を使わず足で蹴れ」と合図して、自らピーターにズルをさせて、敗北と死を選ぶ。もともと貴族育ちのフック船長は、ピーターパンの生意気さや無礼さがずっと気に食わず、最後にピーターに無礼をさせたかったのだ。

死ぬ前に、フック船長は、貴族が通う有名学校の生活を思い出していた。

お父さんは子守り犬・ナナの犬小屋で過ごす!?

優秀な子守犬のナナをお父さんは追い出してしまう。「家族が父親よりナナを大事にしている」という幼稚な理由のためだ。原作では「ナナを追い出したことで子供たちをピーターに攫われた」と、お父さんは猛反省する。

そして、お父さんは反省を示すため、なんとナナの犬小屋で生活するのだ。笑。

世間体ばかり気にしていた厳格な父親だったダーリング氏は、近所から笑われてもこの生活を続ける。やがて事情を知った近所の方達から同情を集め、社交界でも逆に尊敬されるようになる。

このくだりは原作の中でも面白く、かわいらしいエピソードだ。『ピーターパン』は、両親の成長物語でもあるのだ。もちろんナナはまた部屋に戻り、お父さんも戻った。お父さんは迷子たちを全員養子に迎え入れた。

原作『ピーターパン』のちょっと切ない結末

ディズニー映画『ピーターパン』の原作

ピーターのかわいそうな過去

ディズニーのピーターパンでは、最後にピーターが海賊船でウェンディたちを家まで送っていく。

原作ではこうだ。ダーリング夫妻は毎日窓を開けて子供たちの帰りを待ちこがれているが、ピーターはこっそり窓に鍵をかけ、ウェンディに「もう両親は待っていない」と思わせ、ウェンディを連れ帰ろうとする。ピーターが過去に両親に同じことをされたためだ。

ピーターもその昔、家に帰ろうとしたことが一度だけあったが、家の鍵は閉まっており、別の子供をあやすお母さんが見えた。ピーターパンはもう二度と帰らなかった。

原作では、ウェンディはどうなったのか?

ピーターは大人になったウェンディと再会

ウェンディのお母さんの涙を見たピーターは、かわいそうになり、結局ダーリング家の鍵を開けて、ウェンディを帰してあげた。ウェンディのお母さんは「年に一度だけウェンディをネバーランドに行かせてあげる」とピーターに約束をする。

ウェンディは年に一度ピーターパンを待つが、時間の概念がなく忘れっぽいピーターは、来たり来なかったりする。そのうち2年後になり、数年後になり、ウェンディは大人になる。弟たち、養子になったロストボーイズたちもまた一般的な大人となって、子供時代のことは忘れてしまう。

数十年後、大人になったウェンディを見て、ピーターパンは泣き崩れる。

ピーターを慰めたのは、ウェンディの娘・ジェーン。最初にウェンディとピーターが出会ったシーンが伏線となっている。

その年から、ピーターは娘ジェーンとネバーランドへ、そしてまたその娘、その娘…と受け継がれていった。

これが原作『ピーターパンとウェンディ』のラストである。ハッピーエンドだが、ウェンディが大人になっていくのは、少し切なかった。

ディズニーでは『ピーターパン2』という続編で、娘ジェーンと大人になったウェンディが描かれている。

ディズニーアニメ『ピーターパン』は原作にけっこう忠実だった

これまで様々な「ディズニーの原作」を紹介してきたが、その中でも『ピーターパン』はかなり原作に忠実な方ではないか?と思う。

キャラクターも原作とほぼ変わらず、特徴も生かしている。ピーターパンのキャラクターたちはみんなとても魅力的だ。原作がもともとファンタジー要素いっぱいで、ディズニーと通じている。

ロストボーイズの“間引き”描写だけが衝撃だったが、他の部分はおおむね原作もハッピーエンドだった。

大人になってから「子供時代を生きる少年」と「普通の大人になったウェンディたち」を読むと、少し切ない。

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