ディズニー映画でもドラマ『ワンスアポンアタイム』でも白雪姫はいわずと知れたヒロインである。
しかし、このドラマを全編見ていると、悪も善も完全ではない分かる。どちらにもいい面と悪い面があり、時にはヴィランズの方に同情せざるを得ないのだ。
今回はドラマ『ワンスアポンアタイム』で白雪姫がやってきた怖いことをエピソードを振り返りながらまとめてみるぞ。
今回の著者は私。
レジーナが悪い女王になったのは白雪姫のせいである
ヴィランが最初からヴィランとは限らない。レジーナの場合、昔は心優しく勇気のある女性だった。そんなレジーナを悪い女王に変えてしまったのはなんと白雪姫本人だ。シーズン1の印象的なエピソードをふりかえってみよう。
シーズン1第18話「うまやの青年」あらすじ
幼い白雪姫が乗馬中事故に遭いそうになり、若いレジーナは命がけでそれを助けた。
白雪姫の命を救ったことがきっかけで、白雪姫のパパ(つまり国王)からレジーナは求婚を受けることになった。
でも、若きレジーナには愛する恋人がいた。同時に、その恋人との結婚を許さない恐ろしい母親もいた。国王と結婚するシナリオは母親に仕組まれたものだったのだ。乗馬の事故も……。
一方、白雪姫は「命の恩人のおねえさん」が継母になると聞いて大喜び。「お父様と結婚してね♡」とニッコリ。
ところが、白雪姫はある日、レジーナと恋人との密会を目撃してしまう。
「どうして?お父様を愛していないの?」と涙ぐむ白雪姫。
最初から愛してないんじゃー!助けてもらっただけで十分だろうが!怒。
優しいレジーナはしかたなく「私には愛する恋人がいる」という事情を白雪姫に打ち明ける。バレたらおそろしい母親に何をされるかわからないから「絶対に秘密にして」という約束で打ち明けた。
しかし、おそろしい母親コーラに言いくるめられ、白雪姫はレジーナの秘密をバラしてしまう。
その夜、かけおちしようとしたレジーナと恋人の元に母親コーラが現れ、レジーナは目の前で恋人を殺された。
……以上が、幼き白雪姫のやらかしエピソードです。
レジーナに非はまったくないだけでなく、命を救うという最善の行いをしたのに、彼女はそのせいで恋人を失ったのだ。すべては白雪姫の浅はかなで自分勝手な行いのせいである。
子供とて許さぬ…
シーズン1のこのエピソードを見てから、私は完全にレジーナの味方になってしまった。
白雪姫、継母のレジーナ、そしてその母の魔女コーラ、この親子3代の因縁は続いてゆく。
白雪姫は悪い女王の母親コーラを殺した
メアリー・マーガレット(白雪姫)がついに闇落ちするエピソードがある。
シーズン2第16話「粉ひきの娘」あらすじ
死んだと思われていたレジーナの母親コーラがストーリーブルックに戻ってきた。
コーラは闇王ルンペルスティルツスキンの短剣を手に入れており、誰も太刀打ちできない。コーラの目的は、娘レジーナとの絆を取り戻すこと、そして何よりも闇王のパワーを自分のものにして娘も街もすべてを支配すること。
頼みの綱であるゴールド氏(=ルンペルスティルツスキン)は短剣を奪われ死にかけているし、レジーナは娘なので憎くても愛している母親を殺すことができない。そこで白雪姫は「いつもとちがうことをするべきだわ」と思い立つ。いつも正義の行いをしてきたつもりらしいが、こんなに悪いことばかり起こるのだからまちがっているのかもしれない。コーラを殺すしかない、と。
白雪姫はレジーナにコーラの心臓を渡す(コーラは弱点になる自分の「心」をあらかじめ抜いているのだ)
「この心臓をお母さんの心に戻せば、人の心がもどってあなたも愛されるはず」。
愛がほしいレジーナは、白雪姫から母親の心臓を受け取った。
ところが、レジーナがコーラの体に心臓を戻した途端、コーラは死んでしまった。白雪姫が心臓に細工したのだ。
反省した白雪姫とチャーミングがかけつけるが、時すでに遅し。母親を抱き泣くレジーナは「あんたのしわざね」と白雪姫を睨む。
この出来事で白雪姫の心臓には、闇を意味する一つの黒い点が現れた。
……以上が、大人になったメアリーマーガレット(白雪姫)のやらかしです。これは言い訳のしようもない。
個人的に一番ひどいと思ったのは、自分の手で直接手を下さず、よりによって娘のレジーナにやらせたことである。
一体、お前はどれだけレジーナをおとしめる気なのか。「汚れ仕事はヴィランがやるべき♥」とでも思っているのか、お姫様は……。
しかし、これが白雪姫がやった最初に最後の悪事だと思ったら大間違いである。実は大昔にも前科がまだあるのだった。
白雪姫とプリンス・チャーミングはマレフィセントの子供をさらい、自分の子供の闇を押しつけた
シーズン4第17話 「白雪姫の黒い心」あらすじ
過去の話。白雪姫とプリンス・チャーミングは生まれてくる娘の未来を垣間見た。その未来は娘エマが邪悪になるというもの。
白雪姫たちは魔法使いの弟子に「娘をなんとか善人にできないか?」方法を聞きにいく。
唯一の方法は「別の魂に闇を吸い取らせる」というもの。それも自分の子供たちと同じようにまだ善にも悪にも染まっていない無垢の存在でないといけない。そして、この魔法は一回かけてしまうと取り消し不可能だという。
チャーミング王子「他人の子に闇を押し付けるなんて間違ってる」と言ったが、白雪姫は驚きの暴言を吐く。
白雪姫「人の子じゃなければ?マレフィセントが卵を産んだわ。邪悪な子は邪悪になる」
こうして白雪姫とチャーミングはマレフィセントの洞窟に乗り込み、卵を奪った。
マレフィセントに「母親同士でしょ。子供を奪わないで。失ったら生きていけないわ」と涙目で懇願されたにもかかわらず「用が済んだら返す」と奪い去ったのだ。まさに鬼畜の所業である。
魔法使いの弟子は、マレフィセントの卵に闇を押し付け、危険なので別の世界に送り出してしまう。
マレフィセントは子供に闇を押し付けられただけでなく、失ったのだった。
……以上が、白雪姫の極悪非道物語である。
魔法使いの弟子が別の世界に送ると聞いて「そんなこと聞いていないわ!話が違う!」とようやく我に返っているが、だまされちゃいけない。白雪姫とプリンスは被害者じゃなく、正真正銘の大悪党である。
自分の子をいい子にするために他の子を邪悪にするなんてモンスターペアレントそのものだ。
白雪姫は子供を返してとすがるマレフィセントに「これは子供じゃない。あなたと同じ怪物よ」とまで言い放った。
怪物はどっちだ……。
恐ろしすぎる白雪姫はヒロインか?ヴィランか?
『ワンスアポンアタイム』の白雪姫(メアリー・マーガレット)は、ディズニーアニメーションと同じくお姫様であり、その存在は、あくまで「善」であり「ヒーロー」とされている。
が、今回の記事だけ読めば、白雪姫は邪悪で自己中心的なヴィランではないだろうか。
もっとも受け入れがたいのは、自分のことを悪役と思っているヴィランズとは違い、白雪姫とチャーミング王子は自分たちのことをいつでも正義と思っている点である。
悪の自覚がない悪ほど恐ろしいモノはない。
悪の存在とされるヴィランズたちに「善い心」があるのと同じくらい、ヒーローたちにも「悪い心」がある。これがこのドラマ『ワンスアポンアタイム』の教訓である。