主人公がかけた「情け」が最終的にみんなを救う
【ハリーポッターとロードオブザリングの比較シリーズ】ロードオブザリングもハリポタも、主人公がかけた小さな情けが最終的には大きく運命を分けた……という流れがある。
まさに「情けは人のためならず」。この言葉は「人に情けをかけておけばいつか自分に返ってくる」という意味である。
さて、魔法界では情けがどんな結果になったのだろうか?
【指輪物語】フロドがゴラムにかけた情けとは?
ビルボはゴラムを生かした
原作『指輪物語〜旅の仲間〜』より:
ビルボ・バギンズが旅に出ていた時代のエピソードをガンダルフがフロドに語る。
ビルボはゴラムを消すチャンスがあったが、思いとどまり、彼を生かしたという。フロドはその話を聞いて、「その時刺してくれればよかったのに!情けない!」とビルボを責めた。
フロドの憤りはもっともである。そのせいで「力の指輪」はゴラムが所有し続け、世界があんな状況になったとも言えるからだ。
死についてガンダルフの名言
フロドの意見を聞いて、賢者ガンダルフは「情けないだと!ビルボの手をとどめたのは慈悲じゃ」とフロドを叱責した。
「生きている者の多数は死んだっていいやつじゃ。そして死ぬる者の中には生きていてほしい者がおる。」
「あんたは死者に命を与えられるか? もしできないのなら、そうせっかちに死の判定を下すものではない」
-ガンダルフ
未来は予測がつかないが、殺せば取り返しはつかない。
「死の判断を簡単に下してはならない」は賢者ガンダルフの名言である。
なお、このシーンは映画では短く凝縮されて出てきたと思う。
フロドもゴラムを生かした
映画『ロード・オブ・ザ・リング』でも、フロドがゴラムに情けをかけるシーンがある。
フロド、サムと共に旅していたゴラムは、指輪欲しさに数々の裏切りを働く。映画では、ついに限界を迎えたサムがゴラムを殺そうとするが、フロドがそれを制す。
「何かの役に立つ」という理由だったが、同じく指輪に苦しめられている者として、フロドはゴラムに多少の同情を抱いていたのだろう。
それとも、先のガンダルフの名言をフロドはちゃんと憶えていたのではないだろうか。
実はガンダルフもゴラムを生かしていた
映画版ではさらっとしか語られないが、ガンダルフは『旅の仲間』でホビット庄にくる前に、ゴラムを尾行していた。
サウロンが復活する可能性があるのか、裏をとるためだ。かなり長い間、ガンダルフはゴラムを観察していた。
ゴラムが指輪の力で悪い影響を帯びているのは当時から明らかだった。しかも「指輪を奪ったやつ」ということでビルボを恨んでいてホビット庄に来る可能性がある。
ガンダルフの戦闘能力ならゴラムをやっつけるなんて超カンタンだ。危険分子を摘むなら今である。しかし、ガンダルフは、ゴラムをただ観察して帰ってきた。
これについてはまたあとで触れましょう。
もしフロドがゴラムに情けをかけなければ?指輪はどうなった?
ビルボ、フロド、ガンダルフ3人がゴラムを生かした結果は?
ゴラムは指輪を所有し続け、サウロンはその間にも生き続け(サウロンは指輪が消えないと死なない)、悪の勢力を育て復活させた。世界は再びサウロンと戦うことになった。
フロドとサムは「滅びの山」までゴラムに案内させたが、結局ゴラムは邪魔をし続け、サムとフロドを仲違いさせた。『王の帰還』では最後の最後にゴラムが襲いかかってきた。
……結果は、さんざんじゃないか?(汗)
でも、「やっぱり悪者に情けなんて必要ねえ!」などと思うのは早計で、もっとよく考える必要がある。
指輪は強い者に渡してはいけない
ゴラムを早い段階で消していたら、別の者に指輪が渡っていた可能性もある。
もしサウロンの陣営に指輪が渡っていたら?
もっと早くサウロンの手に「力の指輪」が渡り、指輪を焼滅させるチャンスは0になっていたかもしれない。
もしエルフや魔法使いが指輪が手に入れていたら?
エルフや魔法使いが安心だと思ったら大間違い!なぜなら、「力の指輪」は「もともと力が強いやつが持つと、さらに強力になる」という悪どい性質がある。つまり、エルフや魔法使いは指輪を渡すのに最も危ない人物とも言えるのだ。
その証拠に、ガンダルフやガラドリエルは指輪の所有を自ら辞退している。
もし人間に指輪が渡っていたら?
人間は、サウロン陣営と変わらない。ロードオブザリング世界線では、最も誘惑に弱く、最も欲深いのが人間である。実際、イシルドゥアが指輪を所有したから、サウロンを取り逃したのだ。
【参考記事】指輪はなぜフロドに?サムじゃだめな理由『ロードオブザリング』考察
【結論】ゴラムを生かしておいたのは正しかったのか?
こうやって色んな事態を想定すると、ゴラムの方がマシなのである。
ゴラムは指輪の虜だから他者には渡さないし、一人で暗いところに隠れている。何より、元々ホビットだから戦闘能力が雑魚(笑) ゴラムは生かしておいても害が少ないのだ。
ビルボやフロドは情けだとしても、賢いガンダルフはこの辺りも計算済みで生かしておいた可能性が高い。
この辺りの策略はハリポタのダンブルドアとよく似ているとも言える……。
結局、ゴラムは邪魔をし続けたが、ゴラムを殺していたらもっと悲惨なことになっていた可能性の方が高かったということなのだ。
賢者はあらゆる結果を想定する
つい、映画なんかを見ていると「そんな悪いやつやっつけちゃえー!」と熱くなってしまうが、悪人であっても、自分が勝手に相手の運命を決めてはいけない。
悪いやつは消えても結末がどうなるかは誰にもわからない。さらに事態が悪化する可能性も大いにある。
また、自分にとっての悪者でも、別の誰かにとっては、ガンダルフの言うように「生きていてほしい者」かもしれない。
責任なんて負えないのだから、勝手に判断してはいけないのである。
見方を変えれば、ゴラムは「指輪の被害者」にすぎない。ガンダルフも“哀れな生き物”と呼んでいる。フロドだってエルフやガンダルフなど良い友人がいなければああなっていたかもしれない。
運命は誰にもわからないからこそ、「情けは人のためならず」なのだ。
いつか立場が逆転して、自分が不利になった時、昔かけた情けが返ってくるのかもしれない。
『ハリー・ポッター』の情けエピソードもオススメ
『ハリー・ポッター』と『ロード・オブ・ザ・リング』は2大魔法世界でどちらも大好きなので、よく比較します。
ハリーがピーター・ペティグリューに情けをかけた本当の理由【ハリポタ原作徹底考察】もオススメです。
指輪物語とハリポタには非常に似ているところがあり、面白いのです。