『ラプンツェル』リアルすぎて改変された原作|ディズニーと原作の違い完全ガイド
前のページでは、グリム童話『ラプンツェル』とディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の設定やキャラクターの違いを見てきました。このページでは、物語のクライマックスを考察します。
『ラプンツェル』衝撃的な結末の違い
原作:ラプンツェルが荒れ地に追放され、王子は盲目になる。しかし、最終的には再会し、ラプンツェルの涙で王子の視力が回復し、幸せに暮らす。
ディズニー:ゴーテルが王族からラプンツェルを誘拐したことがバレる。ユージーンがゴーテル母さんと戦い、ラプンツェルの髪を切って魔法の力を失わせる。ゴーテルは最終的に塔から落ち、ラプンツェルとユージーンは王国に戻り、幸せに暮らす。
一応、原作もハッピーエンドと言えます。
原作のゴーテルはかわいそう
もう一度言うけど、原作のゴーテル、悪くなくない?
- そもそも両親がゴーテルの庭から魔法の植物を盗んだのが発端。
- 魔女がラプンツェルを奪ったのも正規契約である。
- ラプンツェル(未成年)と王子はこっそり会って色々した。
- 不道徳を働いたラプンツェルを追放しただけ。危害は加えていない。
- 捜しにきた王子は勝手に絶望して飛び降りた。危害は加えていない。
原作を読むと、ひたすら魔女ゴーテルがかわいそうです。純粋な悪として描かれていますが、彼女の何が悪かったのか。魔女というだけで悪なのか?
ゴーテル目線で整理すると、あらすじはこうなります☞「家に盗みに入られて(しかもこれから人の親になるという立派な大人が犯人)、代わりに娘を要求した。育てた小娘は意外とちゃっかり彼氏とか作っていて、未成年で妊娠。娘と絶縁したら今度は彼氏がやってきて勝手に絶望して、私の家の窓から飛び降りた」
原作のゴーテルさんはむしろ被害者でしょう。結構な迷惑家族に関わってしまいましたね…。
原作のゴーテルは生き延びる
原作の結末に、ゴーテルの最期は描かれていません。おそらく生きています。何にも悪いことをしてないのだから当然ですけどね! ゴーテルさんには、これからも魔女の小屋でのびのびと生きてほしいものです。庭に防犯用の柵でもつけてさ。
ディズニーのゴーテルはヴィランズ王道の結末
一方、ディズニー映画版では、ゴーテルは塔から落ちています。
「高いところから落ちる」という最期はディズニーヴィランズの定番です。
ほかの例を挙げるなら、『ノートルダムの鐘』のフロロー、『白雪姫』のクイーン、『美女と野獣』のガストン、『ライオンキング』のスカーなど。みんな崖の上や塔など高いところから落ちる結末を迎えています。
ラプンツェルのマザーゴーテルも先輩ディズニーヴィランズの伝統に従いましたね。
ラプンツェルとゴーテルには愛情があった?
最後になりますが、個人的にはラプンツェルとゴーテルの絆が気になります。
というのも、ゴーテルが塔から落ちる時、ラプンツェルは一瞬手を差し伸べるのです。とっさに助けようとしているように見えます。
ラプンツェルとノートルダムの鐘の共通点
ラプンツェルと同じことをしたのが『ノートルダムの鐘』のカジモドです。フロローが落ちる前に、一瞬手を差し伸べ、彼を助けようとします。
それもそのはず。ラプンツェルとカジモドの境遇は似ているのです。フロローもゴーテルと同じように、親ではないけどカジモドを育てました。そして、ラプンツェルと同じように大聖堂にカジモドを閉じ込めていました。
関係はゆがんでいて愛憎のようでもありますが、誰より一緒に過ごしてきてはいるのです。
ゴーテル母さんは、ラプンツェルが退屈しないように絵の具や洋裁セット、キャンドル作りキットなど買い与えています。日頃から好物のスープも作ってあげているようだし、ラプンツェルにねだられてわざわざキノコを買いに出かけています。
フロローの父っつぁんは、カジモドに教育を与えていました。身分の高い聖職者であるフロローはおそらく高い教育を受けているので、マンツーマンレッスンはなかなか価値があるでしょう(笑)
これは、個人的な考察ですが、ラプンツェルとゴーテルの間には愛情があったと思います。フロローとカジモドの間にも。フロローとカジモドの関係がより愛憎関係に近いのに比べれば、ラプンツェルとゴーテルは、ごく普通の母娘らしかったと言えます。
ディズニーのゴーテルは原作超え
一応の愛情があったと考えると、ディズニーのゴーテルも少しかわいそうですね。
とはいえ、ゴーテル母さんは、最終的にはナイフを持ち、ユージーンを刺すので、原作の魔女を超えています。何度も言いますが、原作の魔女ゴーテル全然悪くないから(笑)
【まとめ】原作は主人公たちの方が強烈だった
これまでいくつものディズニー原作考察(一覧はこちら)で見てきたように、原作の方がディズニー版よりも暗く残酷で、教訓めいていますね。
でも、ゴーテルの例のように、原作のヴィランズはそこまで悪くなかったりします。同情できる要素を持っていることも多いです。
原作で悪質なのは、むしろ、主人公たちの方かもしれません。原作のプリンセスやプリンス、ヒーローには全く同情できないことが多々ありますw
ディズニー版はさすが、キャラクターが愛されるようにうまく描かれています。ラプンツェルは近年で一番人気のあるプリンセスの1人だし、ユージーンなんて変顔までしてくれて最高ですよね。馬のマキシマスやカメレオンのパスカルなど、動物キャラクターもユーモアと親しみやすさを加えています。
ランタンのシーンは、ディズニー映画史に残る美しい瞬間です。
以上、『塔の上のラプンツェル』の原作考察でした。
このシリーズは驚きの連続で、書いていても本当に楽しいですね〜!
この記事で他の作品にも触れちゃいましたが、まだ読んでないよ〜って方は、ぜひ併せてお楽しみください! 下にナビゲーションを貼っておきます。
▼そのほかのディズニーおとぎ話の原作シリーズはこちら▼
“同情できない主人公たち”は『ノートルダムの鐘』、『ピノキオ』、『ピーターパン』辺りにいるよ↓ 笑