『ピノキオ』の原作は残酷すぎて封印|本当は怖いディズニーおとぎ話を詳しく比較

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あやつり人形ピノキオの実写イメージ

ディズニー映画『ピノキオ』は白雪姫に次ぐディズニー長編アニメーション。実はアニメを見ていないという人も、かわいいキャラクターと「♪星に願いを」くらいは知っているでしょう。

しかし実は、ピノキオの原作は戦慄ものの恐ろしさなんです……

現在では書き換えられてしまった洋書の原作を読んでみた著者が『ピノキオ』についてわかりやすくかみくだいて解説します。

  • まず、ピノキオの原作と日本語版の紹介
  • 次に、ディズニー映画と原作で異なるキャラクター
  • 最後に、原作ではどんな衝撃の結末を迎えたか

以上をこの記事ではまとめました。

みなさんも私と同じように、原作とディズニー映画の違いにきっと驚くと思いますよ。

『ピノキオ』最初の原作と現代版の違いとは?

『ピノキオ』の本当の原作と今私たちが見られる現代版とでは、物語の結末に大きな違いがあります。その違いを簡潔に紹介しましょう。

カルロコロッディ作ピノキオ原作の挿絵

カルロコロッディ作ピノキオ原作の挿絵

ピノキオの原作はカルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』である

『ピノキオ』は、イタリアの児童文学作品であり、その作者はイタリアの作家カルロ・コッローディです。彼の作品は、『あやつり人形の物語』というタイトルで雑誌に連載されていました。この連載が、後に『ピノキオ』として広く知られる原作となったのです。

最初の原作は恐すぎて、あとから幸せな結末に書き換えられた

『ピノキオ』を改変したのはディズニーだけではありません。現在普及している原作自体も、初版よりかなり内容が柔らかくなっています。

今回Wikipediaで参照したあらすじは、私が読んだものとはかなり異なっていました。ネット上でも「児童書ではない原文は出版されていないのか?」というトピックが存在します。実際、オリジナルの原作は当時でも「残酷すぎる」と言われ、その後、幸せな結末が追加されたのです。おそらく、現在日本語で読めるほとんどの『ピノキオ』は、ディズニー版か原作の改訂版です。

今回の記事は、私が読んだ洋書版をもとにしています。この洋書版は、欧米向けの著作権が切れたもので、さらに「カルロ・コッローディ版」と明記されているものです。

ディズニー版と原作で異なるあらすじ、キャラクターの違い

ディズニー版と原作の『ピノキオ』では、あらすじとキャラクター設定が大きく異なります。それぞれの違いを簡潔に解説します。

ピノキオ原作キャラクターのイラスト

ピノキオはもともと悪い木から作られた

  • ディズニー版:時計職人のゼペットじいさんが木彫りの人形をつくる
  • 原作:この木材は人形になる前から邪悪な気質を持ち、ゼペットじいさんと友人を喧嘩させたりイタズラをする。

木彫りの人形という設定は同じですが、原作では材質から邪悪なんですね。

ピノキオは少しも反省しない超ワルガキ

  • ディズニー版:ピノキオは改心して人間の子になる
  • 原作:ピノキオは毎回反省するものの少しも改心せず、ゼペットさんを極限まで苦しめる

ゼペットさんは貧しく、自分の洋服まで売ってピノキオのために教科書を買いますが、ピノキオは遊びのためにそれを軽々と売り払います。

ゼペットじいさんは寒さに震えながらも何度もピノキオを待ち続けますが、ピノキオは誘惑に負けて、ちっとも家に帰ってきません。このやりとりは、読んでいて心を痛めるほど何度も繰り返されます。

ファウルフェロー(キツネ)とギデオン(ねこ)は悪質な詐欺師

  • ディズニー版:悪い顔をしたファウルフェローととぼけた顔の相棒ギデオン。悪者だがディズニーヴィランズの中ではコメディ寄りである。
  • 原作:原作では「足の悪いキツネ」に「盲目のネコ」。詐欺師として金銭を奪ったり子供を売り飛ばしたりする。

ディズニーでは人気のおとぼけヴィランであるファウルフェローとギデオン。ディズニーリゾートのグリーティングでも人気があります。

しかし、原作の2人は本物の詐欺師です。それもやり方が現実世界の詐欺と変わらず恐怖を感じさせます。

衝撃的な結末についてはのちに詳しく語りましょう…

ジミニークリケットはピノキオに金槌でつぶされる

  • ディズニー版:ジミニークリケットはブルーフェアリーから「良心」に任命され、ピノキオの友人としてあらゆる局面で助言をする。最後にはその功績を讃えられ、勲章をもらう。
  • 原作:原作のジミニークリケットは相棒でも友人でもない。ただの名もなき喋るコオロギである。そして物語序盤、忠告に腹を立てたピノキオに金槌でつぶされてしまう

ジミニー・クリケットはディズニー界の中ではかなり重要な位置を占めています。しかし、原作では名前すらなく、かなり早い段階でジ・エンドを迎えます…。

ブルーフェアリーは青い仙女

  • ディズニー版:ブルーフェアリーは良い妖精で、ピノキオに試練も与えるが、乗り越えた褒美として、最後は人間に変えてくれる。
  • 原作:改定前の原作にブルーフェアリーらしき妖精は出てこない。その代わり「青い仙女」という謎の女性が出てくる。この人は悪い人ではなくピノキオにチャンスをくれる。「姉弟のように一緒に暮らしましょう」と提案するが、結局ピノキオは帰ってこず、裏切られる。

ブルーフェアリーは、東京ディズニーランドのエレクトリカルパレードで先頭に立つ美しい妖精です。ピノキオを人間に変えるという物語で最も大切な役割を持っています。

しかし、原作の「青い仙女」は、あまり役割がありません。悪い人ではないですがちょっと不気味な存在でした…。

ディズニー版では考えられない衝撃の恐ろしい結末

最後に原作の『ピノキオ』の結末を見てみましょう。ディズニー映画とは全く違う、衝撃の結末が待っていました・・・。

ピノキオは最後まで改心せず、登場人物みんなを傷つける

原作のピノキオは、一度もいい子になりません。彼は何度も自分の弱い心に負け、愛情を注いでくれるゼペット爺さんを裏切ります。また、助言を与えてくれたコオロギを無視し、情け深い青い仙女さえも裏切ってしまいます。

最終的にピノキオは木に吊るされて悲惨な最期を遂げる

悪いピノキオには、悲惨な最期が待っていました。

ピノキオは、さらに悪質な詐欺師のキツネとねこによって、木に吊るされ、ナイフで刺されます。しかし、丈夫な木でできたピノキオは息絶えず、叫び続けます。

詐欺師たちはピノキオが面倒になり、そのまま放置します。

そして、数日後、ピノキオの死亡が確認されることになるのです。

残酷すぎるエンディングに批判が殺到

『ピノキオ』は1881年から雑誌に連載されていましたが、当時でも「ラストが残酷すぎる」として批判が相次ぎました。

そのため、ピノキオの最期は取り消され、現在のような「改心して妖精によって本物の人間に変えられる」というハッピーエンドに書き換えられました。

1800年代でもアウトだったw

『ピノキオ』はディズニーアニメ史上でももっとも多くの悪役が登場する映画

これはオリジナルの考察になりますが、ピノキオは悪役キャラクターが最も多いディズニー映画です。

ディズニー公式の見解では『ピノキオ』のヴィランは、人形劇場の親方ストロンボリとされています。しかし、ピノキオの悪役はこれだけではありません。

実際には、ピノキオを誘惑する狐のファウルフェローと相方のギデオン。この二人と組んで悪ガキたちをプレジャーアイランドへ誘拐したコーチマン。プレジャーアイランドで悪い遊びに誘った悪友ランプウィック、そして最後には、おばけクジラのモンストロが登場します。

なんと合計6人もの悪役が登場するのです。これは、近年の作品でも見られないほどの数ですよ。味方キャラクターの数を上回る悪者揃いの映画、それが「ピノキオ」なのです。

ディズニー版のピノキオは「信じれば夢が叶う」素敵な物語に生まれ変わった

ディズニー映画は、無名のコオロギをジミニー・クリケットという魅力的なキャラクターに、不気味な仙女を美しい妖精に、そして恐ろしい詐欺師をコミカルなディズニーヴィランに変えました。その手法は見事です。

しかし、古いディズニー作品では、原作の恐ろしさや教訓も一部残されています。『ピノキオ』は、ウォルト・ディズニー自身が深く関わった作品であり、子供向けに見せながらも多くの悪役が登場し、原作の人生の試練というテーマをしっかりと残しています。

薄っぺらいエンタメにせず、あえて少し怖い部分を残して印象に強く残る作品にしたこと、これがウォルト・ディズニーの本当の手腕かもしれません。

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