ディズニー映画『ポカホンタス』は、多くの人が知る人気のアニメーション作品ですが、実はこの物語には実在した人物がモデルとなっていることをご存知でしょうか?
今回は、『ポカホンタス』の実話に迫り、作品と実際の出来事の違いについて徹底的に調査してみました。ディズニー版と実話の違いに興味がある方は必見です。
また、ディズニー版を愛する私自身が、作品の魅力や見どころについてもお伝えしていきますので、最後までお楽しみください!
『ポカホンタス』どこまで実話?
史実の証拠として、ポカホンタスは、なんと、アメリカの歴史教科書にも載っているのです!
「ポカホンタス」の実在モデルとあらすじ
最初に「ポカホンタス」の背景や物語のあらすじについて簡単に紹介します。
ポカホンタスはネイティブアメリカンの少女
「ポカホンタス」とは、実在したネイティブアメリカンの少女の名前です。17世紀初頭にアメリカで起こったネイティブアメリカンとイギリス人入植者の交流の中で、その名が有名になりました。
彼女はポウハタン族の首長、ワフンソナコック(ポウハタン)の娘で、生年月日は不明ですが、1595年ごろに生まれたとされています。
物語の概要
彼女の物語は、イギリス人入植者ジョン・スミスとの出会いから始まります。ポカホンタスはジョン・スミスを救ったとされ、その後、二人は友情を築きました。
しかし、ポカホンタスが17歳の時にイギリス人のジョン・ロルフと結婚し、イギリスに移住しました。そこで彼女は「レベッカ・ロルフ」と名を変え、結婚後にはキリスト教に改宗しました。
ディズニー映画「ポカホンタス」
ディズニー映画「ポカホンタス」は、ポカホンタスとジョン・スミスの恋物語を中心に、ネイティブアメリカンとイギリス人入植者の交流を描いたストーリーです。物語は、二人の出会いから、入植者とネイティブアメリカンの対立や軋轢、そして両者の文化の違いによる誤解や衝突が描かれています。
「ポカホンタス」は、現在でも多くの人に愛されており、彼女の生涯や物語、ディズニー映画に関する研究や考察も行われています。
ジョン・スミスは実在した?
ポカホンタスの恋人、ジョン・スミスも実在した青年です。がっしりした傭兵だったと言われています。
肖像画を見る限り、ディズニー版のようにイケメンではなさそうなものの、確かに強そうですね。ジョン・スミスが実力のある人物だというのは『ポカホンタス』の冒頭でも言われていました。
でも、これまでの考察から推測すると、ディズニーなら大幅なアレンジを映画に加えているはずですよねっ。
ディズニー版と史実で異なるあらすじ
次は、ディズニー映画と実話との違いについて考察していきます。
ジョン・スミスとポカホンタスの関係
結論から先に言ってしまうと、
ちょっとショックですが、これが最もディズニー映画と違う点です。
ポカホンタスの実年齢
ディズニー映画のポカホンタスが20歳前のハイティーンくらいに見えるのに比べ、実在したポカホンタスはわずか10〜11歳です。まだほんの子供で、恋愛できる年齢ではありません。
この点がディズニー版の一番の変更点ではないでしょうか。
ディズニー版では、2人の年齢を同じくらいに変えて、映画にロマンス要素を追加しました。
今では、ポカホンタスはディズニープリンセスの仲間入りをしています。実際にポカホンタスはポウハタン族酋長の娘なので、西洋の概念でいうと、立派な「プリンセス」にあたります。
ポカホンタスとジョン・スミスのエピソードの真実
ディズニー映画「ポカホンタス」で、先住民のポカホンタスが、イギリス人のジョン・スミスの命を救う場面があります。史実でもそう信じられていたそうですが、このようなエピソードが存在するかどうかは疑問が残ります。
ジョン・スミス自身は「ポカホンタスはよく遊びに来た」「ポウハタン族に襲われたが、ポカホンタスが知らせてくれたため、命を救われた」と晩年にエピソードを語っています。
しかし、ポウハタン族側は「そんな事実は一切ない」と否定しているらしいのです。
一方で、英雄視されたはずの先住民達側は「勝手に美談を作るな」と怒っているそう。
ジョン・スミスのウソ説
ポカホンタスとジョン・スミスの美談は、ジョン・スミスの作り話だという説があります。
ポカホンタスは先住民の曹長の娘であり、イギリス側によってマーケティングに利用され、有名になっていきました。(※こっちの記事で詳しく「駄作だと思ってた続編ポカホンタス2が実話だった件!|ディズニープリンセスの歴史」)
そして、有名になったポカホンタスとの美談を後にジョン・スミスが語り始めたとされています。
しかし、現在では事実関係が不明確であるため、ジョン・スミスのウソ説が広がっています。
すごくカンタンにいうと、ジョン・スミスの売名行為だったというわけ
ディズニー版『ポカホンタス』の魅力(感想)
調べてみると、人物自体は史実に基づいているが、設定は現実とは大きく異なるように感じました。それでも、ファンとして、ディズニー映画が持つ「映画としての」魅力を考えてみることにします!
ポカホンタスはもっとヒットするはずだった
ディズニーの関係者の多くは『ポカホンタス』が看板作品になることを今でも望んでいる。当時のスタジオの主任だったジェフリー・カッツェンバーグは『ポカホンタス』が『ライオン・キング』よりも高い名声を誇り、1991年に公開された『美女と野獣』のようにアカデミー賞にノミネートされることを夢見た。 ―wikipedia
作品自体は質が高いのに、子供向けの作品とは言い切れず、デリケートな史実を扱っているため、人権団体から批判されたことが理由で、あまりメジャーにならなかったようです。
しかしながら、声優陣や製作に携わった人の中には部族出身者もおり、『ポカホンタス』を肯定的に受け止めている人々も存在するようです。
カリブの海賊やスプラッシュまで……ポリコレの問題
(余談ですが)近年ではポリコレ傾向やコンプライアンスがますますデリケートになっていますが、個人的には「批判を受けて、作品自体を無くしたり改善すべきではない」と思います。それがどんな形であれ、当時に表現したことは大事だったのでは?
例えば、もし『ポカホンタス』という作品が無ければ、あるいは感動したりしない駄作なら、日本人の私は、こうして史実を調べたり考える機会すらなかったわけだから。ありがたいなって。
感情を動かしたという時点で作品は評価されるべきだし、差別表現が含まれていても実際に起こったことなのだから残して、むしろ「何が間違っていたのか」を伝えていくべきだと思います。
ハッピーエンドではないディズニープリンセスもの
『ポカホンタス』の特徴は、ディズニーの恋愛ものなのにハッピーエンドではないところにあります。本来敵同士の恋愛ということで、ロミオとジュリエット的な悲恋の物語なのです。
ディズニーアニメの中でいうなら、主人公のカジモドは失恋したけど感動のエンディングを迎える『ノートルダムの鐘』と雰囲気が少し似ていますね。制作時期も同じで、曲と壮大な絵が美しく、大人向けミュージカルという点も共通しています。
(気になる人は『ノートルダムの鐘』原作では全員不幸に?|本当は怖いディズニーおとぎ話 もあとで読んでね!)
王子様を待つ必要はない
ポカホンタスの感動は、いわゆる「王子様がいつか迎えに来てくれる」シンデレラの感動とは違います。
ポカホンタスの場合、正直、ジョン・スミスはどうでもいい。笑。
むしろ、ヒーローはポカホンタスの方で、ジョン・スミスを救ってあげるのです。
だから、エンディングももちろん、ポカホンタスはジョン・スミスにはついていきません。もし、ジョン・スミスが負傷してなかったら、恐らくジョン・スミスが村に残って婿入りしてハッピーエンドになっていたことでしょう。(近年の『アナと雪の女王』なんかはそのパターンだよね)
ポカホンタスで一番好きなシーン
ポカホンタスは「子供向けではない」と書いたけれど、恋愛を少しでも意識する年齢なら十分楽しめる作品だと思います。
私がポカホンタスを初めて観た時はおそらく小学生か中学生でしたが、それでもひどく感動した記憶があります。
お気に入りのシーンはたくさんありますが、中でも一番好きなのは、ジョン・スミスとポカホンタスが初めて出会う滝のシーンです。
セリフもなく、ポカホンタスが凛と立ち、音楽が流れる……
あのシーンに釘付けになりました。
今回の考察で、歴史的事実が少しショックだったけど、それでも、『ポカホンタス』を最初に見た時の感動は変わらないと感じます。これからもずっとあのシーンを見たいと思っています。
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以上、史実のポカホンタスとディズニー映画ポカホンタスの比較考察、いかがでしたでしょうか?
続編はこちら 駄作だと思ってた続編ポカホンタス2が実話だった件!|ディズニープリンセスの歴史
▼そのほかのディズニーおとぎ話の原作シリーズはこちら▼
書籍:「アメリカを作ったもの」ウィリアム・M・トワデル、「アメリカ人の物語」西川秀和
サイト:wikipedia